Next Stage
CEDAR Produce vol.10
作 高行健
翻訳 瀬戸宏
演出 松森望宏
2023年7月26日(水)~30日(日)
下北沢 OFF・OFFシアター
企画・制作・主催 一般社団法人CEDAR
英雄になりたかったんだ……
愚かな自殺だよ。
高行健の衝撃作、『逃亡』
2023年7月/OFF・OFFシアターにて上演!
CEDARが次回作に選んだのは、華人で史上初めて2000年にノーベル文学賞を受賞した作家・高行健(ガオ・シンジェン)の代表作『逃亡』です。
1989年6月、中国北京で天安門事件が発生。民主化を求める学生のデモ隊を、軍隊が武力を行使し鎮圧したその凄惨な事件は、世界中を震撼させました。作家・高行健は留学先のパリから事件を眺め、その年の10月に『逃亡』を執筆しました。
CAST
中年 和田琢磨
娘 希代 彩
青年 桧山征翔
Introduction
物語はとある共産国家での出来事。
人々に慕われた一人の政治家が死んだ。
追悼のために若者たちが広場に集まり始めた。
追悼集会は徐々に姿を変え、
人々は政治の腐敗を声高にさけぶようになった。
民主化を求めた若者たちのデモは、
次第に大きくなっていった。
ある夜、
デモ鎮圧のために広場を包囲していた軍がデモ隊に発砲。
銃弾は若者を貫き、革命への夢は暴力により打ち砕かれていった。
青年(桧山征翔)と娘(希代彩)は銃弾を逃れ必死で逃走。
逃げ込んだのは暗く湿った倉庫。
そこにやってくる自称作家の中年(和田琢磨)。
3人は死に直面しながら【生きている実感】とは何なのかを
ひたすらに考え求め続けていく……
高行健は人間の生命力の煌めく炎と、激動の時代の混乱をひるむことなく直視し、人間の究極的な尊厳に真っ向から向き合いました。この壮絶な人間ドラマを、この作品のためにあえて選定した下北沢OFF・OFFシアターという限られた小空間の中で、濃密で純度の高い人間ドラマをお届けするべくCEDARが挑みます。
登場人物は中年・娘・青年の3人。作家であり当局から目をつけられている中年役に、和田琢磨がCEDAR初登場いたします。デモ隊では拡声器で演説をしていた女優志望の娘役に希代彩。理想の革命と現実の狭間で葛藤する青年役に桧山征翔。三人の織り成す激しくも切ない人間ドラマを、ぜひ小空間でご堪能ください。
今回はアフタートークとして多彩なゲストにご登壇いただくこととなりました。7月27日(木)には本作の翻訳で摂南大学名誉教授の瀬戸宏さんが『逃亡』の背景と題して、演出家松森望宏と作品について熱く語ります。7月28日には第30回読売演劇大賞作品賞上半期ベスト5に選出された作品『わが友ヒットラー』でヒットラー役を演じた谷佳樹さんがCEDARの演劇について語ります。7月30日(日)には映画監督の堤幸彦さんが、自身の実体験も交え、1960年代から70年代の激動の時代を松森と語り合います。28日(金)、29日(土)には出演者によるクロストークもございます。ぜひご注目ください。
Writer
高行健(ガオ・シンジェン)
中国出身のフランス国籍の作家。江西省生まれ。1962年に北京外国語学院フランス語科卒業。文化大革命中は紅衛兵運動に参加したことがあると本人が後に告白している。その後、農村に下放され、安徽(あんき)省で中学校の教師などを経験。1974年に北京に戻り、翻訳の仕事をしながら執筆活動を開始し、小説やエッセイを次々と発表し作家として注目された。1981年に中国を代表する劇団、北京人民芸術劇院の専属劇作家となり、外国劇の手法を大胆に取り入れた劇『非常信号』(中国語原題『絶対信号』)『野人』などが大きな反響をよんだが、保守派からは批判された。1987年にフランスに移住し、1989年に北京で民主化運動を弾圧した天安門事件が起きると、中国政府を批判する声明を発表し、政治亡命の道を選んだ。
1998年にフランス国籍を取得。中国国内を舞台にした自伝的小説が多く、中国語で発表した『霊山』『ある男の聖書』などが 評価され、2000年に華人として初めてノーベル文学賞を受賞した。中国当局は「受賞は政治的理由だった」としてノーベル賞選考委員会を批判した。高行健の作品は中国国内でしばらく発禁処分を受けていたが、その後解禁されている
『逃亡』について 高行健
私が1989年にパリで書いた『逃亡』という劇は、1992年にスウェーデンの王立ドラマ劇場が初演し、今日に至るまでに15か国の少なくとも24の劇団が上演してきました。イギリスとフランスのテレビ・ラジオ局は全劇を放送しています。この24年間にフランスだけでも5つの劇団が上演しました。1996年には日本の神戸の劇団「龍の会」、1998年には東京の俳優座も、この劇を上演しています。今般、日本の演劇ユニットCEDARも上演するということは、この劇の生命力がまだ衰えていない証でしょう。この劇が人類の生存の苦境に目をそむけていないからこそ、観客の共鳴を喚起し、深い自省を促すのです。この劇を観に来てくださったみなさんに感謝すると同時に、上演の成功を祈ります。 (飯塚容訳)
Performance schedule
2023年7月26日(水)~30日(日)
アフタートーク
※開場は開演の20分前 ※未就学児入場不可 ※チケットはお一人様一枚必要です
7月27日(木)19:00 舞台『逃亡』の背景 瀬戸宏(翻訳家・摂南大学名誉教授)×松森望宏(演出家)
7月28日(金)14:00 CEDARの演劇 谷佳樹(俳優)×桧山征翔(俳優)
7月28日(金)19:00 出演者によるクロストーク 和田琢磨×希代彩×桧山征翔 MC:桧山
7月29日(土)18:00 出演者によるクロストーク 和田琢磨×希代彩×桧山征翔 MC:桧山
7月30日(日)13:00 革命 堤幸彦(映画監督・演出家)×松森望宏(演出家)
瀬戸 宏 (翻訳家)
1952年生。摂南大学名誉教授。中国現代文学演劇専攻。主な著書、『中国話劇成立史研究』(東方書店、2005年、日本演劇学会河竹賞受賞)、『中国の現代演劇 中国話劇史概況』(東方書店、2018年)ほか。
谷 佳樹 (俳優)
1987年6月8日生。大阪府出身。
舞台:「文豪とアルケミスト」志賀直哉役、「信長の野望・大志」明智光秀役、2.5 次元ダンスライブ「ツキウタ。」長月夜役、音楽劇「金色のコルダBlue Sky」八木沢雪広役、「DARKNESS HEELS」 ジャグラス ジャグラー役、「剣が君」緑役。映画:「四畳半のジェメオス」主演、「神ミタイナ時間」主演。2.5次元から小劇場、プロデュース作品と常に演技力を買われ、活動の幅は広い。2022年、最近では、舞台「わが友ヒットラー」でヒットラー役を演じ、絶賛された。
堤 幸彦 (映画監督・演出家)
映画監督・演出家。1955年11月3日生まれ、愛知県出身。
1988年、森田芳光総監督のオムニバス映画『バカヤロー! 私、怒ってます』の「英語がなんだ」で映画監督デビュー。
テレビドラマ「金田一少年の事件簿」、「TRICK」シリーズ、「SPEC」シリーズは映画化もされ、ドラマと映画それぞれでヒットさせた。2015年には『イニシエーション・ラブ』『天空の蜂』で第40回記念報知映画賞・監督賞を受賞。舞台演出にも意欲的で、『悼む人』、『真田十勇士』は映画版と舞台版を共に演出。2018年に好評を博した『魔界転生』は2021年に再演され、2023年には『巌流島』を大成功させた。
コロナウイルスの蔓延で表現活動が制限される中、仲間とインディーズ映画『truth〜姦しき弔いの果て〜』(22)を制作し、数々の国際映画賞を獲得。その他の作品に『明日の記憶』(06)、『20世紀少年 三部作』(08〜09)、『人魚の眠る家』(18)、『ファーストラヴ』(21)、『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』(21)など。2022年には、映画監督の本広克行・佐藤祐市らと共に日本初のエンタメDAOプロジェクト「SUPER SAPIENSS」を始動。トークンやNFTを発行し、サポーターとのエンタメ共創により作品を生み出している。